今回は珍しく、ボイスパーカッションの音色ではなく「ベースとドラムの関係から生まれるグルーヴ」について書いていきたいと思います!
アカペラで演奏していると、
「ベースとボイパは、どこまで同じリズムにした方が良いのか?」
「二人の音が合っているのに、なぜかグルーヴが出ない」
ということがあります。
ベースとボイスパーカッションは、同じリズムを演奏した方がまとまりやすいように思えます。
もちろん、重要なキックとベースを合わせることは非常に大切です。
ただ、最初から最後まで、全ての音を同じ位置に置けば良いという話ではありません。
今回の記事で一番お伝えしたいのは、
そろえるのは「1・2・3・4」という基本パルス。拍の内側では、ドラムとベースが違うリズムを演奏して良い。
という考え方です。
8分音符や16分音符、ハネ、シンコペーション、休符などが少しずつ異なることで、リズムに立体感やうねりが生まれます。
さらに、
その拍を身体で「前下方向」に受けるのか、「後ろ上方向」に受けるのか。
これによっても、同じリズムの重さや軽さが変わって感じられます。
今回は、ベースとドラムの関係、基本パルスと拍の内側、わずかな打点差、首で感じるダウンとアップについて、代表曲と一緒にまとめてみたいと思います!
今回もお茶の内容はございません。笑

ベースとドラムは全て同じリズムでなくて良い
まず一番重要なところです。
ベースとドラムは、
同じリズムを演奏する二つの楽器ではありません。
二人で基本の時間を共有しながら、それぞれ別の役割を担当するリズム・チームです。
4拍子で、
「1・2・3・4」
とカウントする場合、この大きな拍については基本的に共有します。
ベースだけが別のテンポへ進んだり、ドラムだけが小節の位置を見失ったりするわけではありません。
一方、その間にある8分音符や16分音符については、同じリズムを演奏する必要はありません。
例えば、
ドラムが細かなハイハットを演奏している間に、ベースは休む。
ドラムが一定のパターンを保っている間に、ベースはシンコペーションする。
ドラムがハネている上で、ベースは大きな拍をまっすぐ支える。
このような組み合わせが可能です。
むしろ、
拍の内側で二人が違う動きをするからこそ、グルーヴに奥行きが生まれます。

図で見るベースとドラムのグルーヴ
文章だけでは少し分かりづらいと思いますので、ここまでの内容を図にまとめました!

図の上段では、ドラムをオレンジ、ベースを青で表しています。
大きな、
「1・2・3・4」
では、二つの楽器が共通のパルスを持っています。
しかし、その間を見ると、ドラムとベースは同じ場所で音を出していません。
大きな拍で合流する。
拍の内側では別々のリズムを演奏する。
次の大きな拍で再び合流する。
この繰り返しが、リズムの揺れや推進力につながります。
ベースとドラムで共有するもの・別々で良いもの 【別々で良いもの】
【共有するもの】
・1拍目、2拍目、3拍目、4拍目という基本パルス
・小節の位置
・曲全体のテンポ
・フレーズの重要な着地点
・8分音符、16分音符の細かな配置
・ハネ方の強さ
・シンコペーション
・休符
・ゴーストノートや装飾音
・音を伸ばす長さ
「ハネ」と「わずかな打点差」は別の話
ここで整理しておきたいのが、
「ハネること」と「打点がわずかに早い、遅いこと」は別
という点です。
ハネやスウィングは、8分音符や16分音符の間隔を均等にせず、長い音と短い音の組み合わせとして感じることです。
例えば、
「タ・タ・タ・タ」
という均等なリズムに対して、
「タータ・タータ」
のような揺れを作ります。
一方、わずかな打点差は、
同じ拍や基準位置に対して、どちらの音が少し早いか、少し遅いか
という話です。
演奏現場では「前ノリ」「後ろノリ」という言葉も使われます。
ただ、より具体的に考えるのであれば、
「ベースのアタックが、スネアよりわずかに早い」
「スネアの打点が、基準の拍よりわずかに遅い」
というように表現した方が分かりやすいと思います。
重要なのは、曲のテンポ全体がずれているわけではないことです。
基本パルスを共有したまま、非常に小さな違いが生まれているイメージです。

ドラムがハネて、ベースが大きな拍を支えるグルーヴ
今回、最初に気になっていたのが、
ドラムはハネているのに、ベースはそれほどハネていない
という組み合わせです。
例えばドラムでは、ハイハットやスネアのゴーストノートが細かくハネています。
一方のベースは、細かな三連符を全て演奏するのではなく、四分音符や重要なキックの位置を中心に支えます。
すると、
ドラム → 拍の内側に細かな揺れを作る
ベース → 大きな時間軸を安定させる
という役割分担になります。
この組み合わせによって、
揺れているのに前へ進む、立体的でファンキーなグルーヴ
が生まれます。
代表的な参考曲としては、TOTOの「Rosanna」が分かりやすいと思います。
ドラムはハーフタイム・シャッフルを細かく表現していますが、ベースは全ての細かなハネを同じように刻み続けるわけではありません。
日本の曲で近い感覚を考える時には、米津玄師さんの「感電」も参考になります。
「Rosanna」と全く同じ構造というわけではありませんが、ドラムの細かな動きと、ベースが作る大きな流れの関係を聴くと面白いです。
組み合わせによってグルーヴはどう変わるのか
ベースとドラムの関係を、いくつかのパターンに分けてみます。
①ストレート × ストレート
ベースとドラムが、均等な8分音符や16分音符を共有する形です。
参考曲としては、
Michael Jackson「Billie Jean」
サカナクション「新宝島」
などが挙げられます。
タイトで安定し、まっすぐ前へ進むようなグルーヴになります。
②シャッフル × シャッフル
ドラムもベースも、三連系のハネを共有する形です。
参考曲としては、
Stevie Ray Vaughan「Pride and Joy」
などがあります。
バンド全体が大きく揺れ、ブルースらしい弾みを感じやすくなります。
日本のポップスでジャズ的な細分や跳躍感を聴く例としては、Official髭男dismの「ミックスナッツ」も面白いと思います。
ただし、曲全体が単純なシャッフルだけで構成されているという意味ではありません。
③安定したドラム × 拍の内側を動くベース
ドラムが一定のパターンを保ち、ベースが16分音符や休符、シンコペーションによって動く形です。
日本の曲では、
Suchmos「STAY TUNE」
星野源「恋」
などを聴きながら、ドラムとベースがどこで合い、どこで別々に動いているか確認すると面白いです。
都会的でファンキーな、柔らかい推進力につながります。
④ドラムとベースの打点がわずかに離れる
この例として非常に興味深いのが、D’Angeloの「Playa Playa」です。
ドラムに対して、ベースや他の楽器がわずかに早い位置へ置かれている箇所があります。
そのため、
ベースが前へ引っ張る。
ドラムが後ろから重さを作る。
という緊張関係が生まれます。
基本パルスは共有されているため、単なる演奏の乱れではなく、独特の重さ、粘り、伸縮感として成立します。
組み合わせで変わるグルーヴ
・ストレート × ストレート → タイト、安定、直進
・シャッフル × シャッフル → 大きな揺れ、ブルース的
・ハネるドラム × 拍を支えるベース → 立体的な推進力
・安定したドラム × 動くベース → 都会的、ファンキー
・相対的に遅いドラム × わずかに早いベース → 緊張感、重さ、伸縮感
人がリズムを「前下方向」で取るか「後ろ上方向」で取るか
ここからは音符ではなく、身体の話です。
人が音楽を聴いている時、自然に首でリズムを取ることがあります。
この時、
拍で首や顎が前下方向へ動く
場合と、
拍で首や顎が後ろ上方向へ動く
場合があります。
これによって、同じ音楽でもグルーヴの受け取り方が変わります。
拍で沈むリズム
1・2・3・4の瞬間に、
鼻の位置から、首や顎が前下方向へ動く
取り方です。
イメージとしては、
1 ↓ ・ 2 ↓ ・ 3 ↓ ・ 4 ↓
となります。
キックやベースを、重力に従って着地するように受けます。
そのため、
重い。
安定している。
地面に根づく。
低音を強く感じる。
というグルーヴになりやすいです。
拍で上がるリズム
こちらは反対に、1・2・3・4の瞬間に、
鼻の位置から、首や顎が後ろ上方向へ動く
取り方です。
イメージとしては、
1 ↑ ・ 2 ↑ ・ 3 ↑ ・ 4 ↑
となります。
音によって身体が持ち上げられるように拍を受けるため、
軽い。
弾む。
浮き上がる。
開放的。
というグルーヴになりやすいです。

音楽用語のダウンビート、アップビートとは分けて考える
今回使っている「拍で沈む」「拍で上がる」という表現は、身体の動く方向について説明したものです。
音楽理論で使われる、
ダウンビート。
アップビート。
と、完全に同じ意味ではありません。
また、ダンスでいうダウンやアップは、首だけでなく膝、腰、胸を含む身体全体の重心移動です。
そのため厳密には、
拍で沈む → 重心は下へ、首や顎は前下方向へ
拍で上がる → 重心は上へ、首や顎は後ろ上方向へ
と整理するのが良いと思います。
同じ曲で身体の方向を変えて聴いてみる
この違いは、実際に身体を動かすとかなり分かりやすいです。
まず好きな曲を流して、
1・2・3・4
と数えます。
最初は、その拍で首や顎を前下方向へ動かしてみます。
次に、同じ拍で首や顎を後ろ上方向へ動かしてみます。
同じ曲であるにもかかわらず、
重く感じる。
軽く感じる。
自然に動ける。
何となく動きにくい。
という違いが出てくると思います。
どちらが正しいということではありません。
曲が持っているグルーヴや、自分が表現したい雰囲気によって使い分けます。
身体でグルーヴを確認する方法
①曲を流して1・2・3・4を数える
②拍で首や顎を前下方向へ動かす
③同じ曲を、今度は後ろ上方向で取る
④どちらが曲の低音やアクセントに自然に合うか確認する
⑤ハイハット、スネア、キック、ベースを一つずつ聴く
⑥どの音で沈み、どの音で跳ね返るか確認する
ボイスパーカッションとベースへ応用する方法

この考え方は、アカペラのアレンジにもそのまま応用できます。
例えば、ベースとボイパが全て同じリズムを演奏している場合、低音のアタックは非常に強くなります。
その一方で、曲によっては少し平坦に聴こえることがあります。
そこで、
小節の頭や重要なキックでは、ベースとボイパを合わせる。
その間では、ボイパがハイハットやゴーストノートを動かす。
ベースは音を伸ばしたり、休符を入れたり、シンコペーションする。
という役割分担を作ります。
すると、二人がバラバラになるのではなく、
同じ拍を共有しながら、それぞれが別の流れを作る
状態になります。
これがアカペラのリズム隊に、奥行きや呼吸を作る方法の一つだと思います。

ベースとドラムのグルーヴまとめ
今回は、
ベースとドラムのリズムの違いから生まれるグルーヴ
についてまとめました。
一番重要なのは、
ベースとドラムは、全て同じリズムを演奏する必要はない
ということです。
ただし、完全に好き勝手に演奏するわけではありません。
1・2・3・4という基本パルス、小節の位置、重要な着地点は共有します。
そのうえで、8分音符や16分音符、ハネ、シンコペーション、休符、ゴーストノートを別々に動かします。
そして、その音を身体が前下方向で受けるのか、後ろ上方向で受けるのかによって、重さや軽さの感じ方も変わります。
ベースとドラムのグルーヴのポイント
・1・2・3・4の基本パルスは共有する
・拍の内側はベースとドラムが違うリズムで良い
・大きな拍で合流し、拍の内側で離れ、次の拍で再び合流する
・ハネと微細な打点差は分けて考える
・何に対して打点が早いか、遅いかを具体的に考える
・ドラムが細かく動き、ベースが大きな拍を支える組み合わせもある
・拍で沈む時は首や顎が前下方向へ動く
・拍で上がる時は、その逆の後ろ上方向へ動く
・アカペラでもベースとボイパの役割を分けてみる
短く表現すると、
大きな拍では一緒に着地する。
拍の内側では別々に動く。
次の拍で再び出会う。
ということです。
これまでベースとボイパを、できるだけ同じリズムにしようとしていた方は、
「重要な場所だけ合わせて、拍の内側は別々にしてみる」
という演奏を一度試してみてください。
録音して聴き比べると、リズム隊の奥行きがかなり変わると思います!

参考・関連記事
(ご参考)グルーヴ・リズムの記事と資料
黒人リズム感の秘密とは?ボイパのリズムを強化し黒人リズム感を会得しよう!
■ボイスパーカッションの基本音色
ボイパで使う音色の基本について知ろう!生演奏で良い音色を出す基礎力をアップしよう!
■初期ファンクのマイクロタイミング研究
Patrick Ainsworth「Microtiming in Early Funk」
■身体運動とグルーヴ知覚に関する研究
「Embodied groove–synchrony model」